長年の技術と経験が重視される施工管理の仕事でも、最近は「未経験OK」の求人が増えています。
経験を問わない求人の背景には、建設業界の人手不足と施工管理人材のニーズ上昇があるようです。
今回は施工管理に未経験OKの求人が増えた理由、近年の施工管理の転職動向について解説します。
施工管理未経験者の転職市場動向
リクルート社が2024年3月に発表した調査結果によると、2023年の施工管理の求人数は2016年の5.04倍、転職者数は3.84倍に増加しています。このことから、施工管理の仕事は売り手市場であることが分かります。
2023年にリクルートのサービスを利用した施工管理転職者を、2016年の転職者数と比較した結果は以下のとおりです。
- 施工管理から施工管理(経験者)が2.95倍
- 異業種から施工管理(未経験者)が5.44倍
経験者・未経験者ともに転職者数が急増していますが、未経験者の大幅な増加が目立ちます。実際、施工管理の転職者全体に占める未経験者の割合は、以下のように増加傾向です。
- 2013年:22.8%
- 2018年:40%以上
- 2023年:49.9%
今回の調査では、施工管理の人気が急上昇していることと、企業も未経験者の採用を大幅に増やしていることが分かりました。
参考:株式会社リクルート「建設業界に迫る『2024 年問題』|『施工管理』求人、2016 年比で 5.04 倍に増加」
「未経験OK」の施工管理求人が増えている背景
施工管理の「未経験OK」求人が増えている背景には、企業の選考基準の緩和や社会的ニーズの増加があります。
建設業従事者の高年齢化や入職者の減少により、業務経験者や専門学科卒のみでは人手が足りません。近年は中小・中堅の建設会社を中心として、求職者に大規模現場の経験や保有資格を問わない会社が増えているのです。
さらに以下の建設ニーズが高まっていることも、施工管理の求人が増えた要因の1つです。
- 社会インフラ老朽化によるメンテナンス需要
- 民間の大規模再開発工事の増加
高度成長期に建設された道路や橋梁、ビルの老朽化対策は待ったなしの状況です。また都市部を中心に、街の機能ごとリノベーションする再開発事業も進められており、ここでも工程を管理できる人材が求められます。
建設業や施工管理全体の需要が高まっていることから、建設会社は人材を底上げするために未経験者の採用も増やしているのです。
未経験でも施工管理へ転職できる理由
未経験でも施工管理へ転職できる大きな理由は以下の3つです。
- 就職に特別な資格がいらない
- 企業に未経験者を育てる環境が整っている
- 未経験からチャレンジできる技術者派遣が増えている
就職に特別な資格がいらない
施工管理の仕事は、建築士や測量士のような「業務独占」ではないため、資格がなくても就職できます。
大規模工事の施工管理を行うためには資格が必要ですが、そもそも資格の取得には実務経験が必要です。ほとんどの人は無資格で就職してから経験を積んで資格を取得し、ステップアップします。
企業に未経験者を育てる環境が整っている
多くの建設会社では、経験の浅い人材や未経験者を育てる環境を整備しています。
OJTや資格取得支援が豊富な会社が多く、未経験で入社してから研修で基礎的な知識やスキルを学べるケースがほとんどです。最近の人材不足もあって、他業種からの転職者の育成に力を入れる会社が増えています。
未経験からチャレンジできる技術者派遣が増えている
最近は未経験からチャレンジできる技術者派遣も増えています。
通常は就職が難しい大手建設会社でも、技術者派遣なら大手のプロジェクトに参加が可能です。技術者派遣なら施工管理の資格がなくても、働きながら資格取得を目指せる環境が整っています。スキルの習得度に応じて働く現場を選べる点も、技術者派遣のメリットです。
実際に技術者派遣で未経験から経験を積み、大手ゼネコンへ転職する事例も増えています。
未経験で施工管理へ転職した事例
最後に、実際に未経験で施工管理へ転職した事例を見てみましょう。
前職(年代) | 転職動機 |
飲食店店舗スタッフ(10代) | 高校で建築系の学科を学んでいたので、施工管理の仕事に活かしたい |
製造業の在庫管理(20代) | 働き方を改善しながら、中長期的に昇給できる環境で仕事をしたい |
IT 業界のカスタマーサポート(20代) | 専門スキルを習得しながら、着実に昇給できる環境で仕事をしたい |
学校教員(20代) | 民間企業でビジネススキルと専門スキルを身に付けたい |
転職事例からは、スキルを習得してキャリアを構築するために、異業種から施工管理を目指す若年の方が一定数いることが伺えます。ここからも、異業種からの未経験転職が決して難しくないことがお分かりいただけたのではないでしょうか。
現在では建設会社の未経験者の受け入れ態勢、研修制度の整備が進んでいるので、就職してからスキルを習得できる職場が増えています。異業種から施工管理への転職をお考えの方は、ぜひ実際の求人をチェックしてみてください。