2019年4月に運用が開始されたCCUS(建設キャリアアップシステム)は、着実に登録者を増やしてきました。国は、2024年「CCUS(建設キャリアアップシステム)利用拡大に向けた3か年計画」を掲げ、さらなる制度の普及とメリット拡大を図っています。
そこで今回から3回シリーズでCCUS利用拡大計画の具体的な施策と、それによって受けられるメリットを解説します。シリーズ1回目は3か年計画の概要と「経験・技能に応じた処遇改善」の施策や取り組みを紹介します。
「CCUS(建設キャリアアップシステム)利用拡大に向けた3か年計画」とは
令和6年(2024年)に改正建設業法が公布され、その中で適正な「労務費の基準」が設けられています。国は、適正な労務費を下請業者まで行きわたらせるために、建設業者が基準に見合う見積もりを出しているかの取り組み状況を調査・公表すると定めました。
そして同年からの3年間を「CCUSのメリット拡大期間」と位置づけ、改正建設業法の取り組みと同時進行で、建設業で働く人の処遇改善と業務効率化を推進するための3か年計画を掲げています。
参照:国土交通省「建設業法・入契法改正(令和6年法律第49号)について」
以下は国土交通省が掲げた3か年計画「経験・技能に応じた処遇改善」のロードマップです。
令和6年度 | 令和7年度 | 令和8年度~ | |
適正な労務費の確保・ 行き渡り | 表明保証に関する検討・試行「建設Gメン」による実地調査 | 労務費の基準の適用 | |
CCUSレベルに応じた手当・賃金等 | CCUSレベルに応じた手当・賃金等の働きかけ | ||
技能者の処遇改善に資する退職金共済制度の検討 | |||
技能者を大切にする 適正企業の評価向上 | 「技能者を大切にする適正企業」の自主宣言制度(仮称)の創設 | インセンティブ提供 | 水準の高い取組を行う企業の認証・インセンティブ強化 |
引用:国土交通省「CCUS 利用拡大に向けた3か年計画(ロードマップ)」
施策①「労務費の基準」に適合した労務費・賃金の支払確保
国は「労務費の基準」に見合う労務費を下請業者まで行きわたらせる方針を改めて明確にし、下請業者に適正な賃金の支払い徹底を求めるとしています。
その際、施策の効力を確実化するために「建設Gメン」による実地調査と監視を行うことも決めました。建設Gメンとは、国土交通省が建設工事の取引実態を調査する職員のことです。建設Gメンは各企業に対し適正な請負金や工期で契約が締結されているか、労務費基準を著しく下回っていないかなどのモニタリング調査を行います。
国は他にも、各企業に適正な賃金支払いを求め、標準約款に記載させるなどの施策も併せて検討していく方針です。
施策②CCUSレベルに応じた賃金支払の確認システムの構築
国はCCUSレベルに応じた賃金が下請け業者まで行きわたるよう、適正な賃金支払いをチェックするシステムを構築する方針です。賃金支払い状況のチェックには建設Gメンも動員し、必要に応じて改善指導を行います。
これに併せてCCUSレベル別年収も、令和7年3月からの公共工事設計労務単価が反映された賃金へと改定されました。今回の労務単価改定では、全国全職種平均で前年度比6.0%の引き上げとなったため、反映されれば働く人の手取りが一段とアップすることになります。
国土交通省「令和7年3月から適用する公共工事設計労務単価について~今回の引き上げにより、13年連続の上昇~」
施策③法定福利費の支払確保(社会保険加入の徹底)
国は法定福利費(雇用主が負担する従業員の健康保険料や厚生年金保険料などのこと)についても、法にもとづき従業員へ適切に還元されるよう徹底する方針です。
以前は入札時の価格を抑えるために、適切な法定福利費を見積もらない事業者もありましたが、平成25年から工事費見積書には法定福利費を含めた記載が義務づけられています。
CCUSの登録情報があれば社会保険加入状況を把握できるため、建設Gメンが加入状況に応じて調査・指導を行うことが可能です。今後は福利厚生費が労働者へ適切に還元されるようになるでしょう。
施策④「技能者を大切にする適正企業」の評価向上・受注機会拡大
国は「技能者を大切にする適正企業」の自主宣言制度を創設し、宣言した企業に以下のようなインセンティブを提供する方針を掲げています。
- 宣言企業はロゴマークを使用可能とする
- 国土交通省ホームページに掲載する
- 競争入札時の審査加点や表彰を行う
ほかにも国は、事業者が工事請負時に適正な労務費・賃金を支払うことを表明する「表明保証」や、高水準の取り組みを行う企業の認証制度も検討しています。これらのインセンティブによって優良な企業の受注機会を増大させる狙いです。
施策⑤外国人材の適正な処遇の確保
国はCCUSを通じて外国人材に対しても日本人と同様に、能力レベルに応じた賃金を支払えるシステムの構築を検討しています。
外国人労働者の適正な就労管理と技能向上の目的で、令和2年(2020年)からは外国人労働者を雇用する事業者のCCUS登録が義務化され、外国人技能者も登録が義務付けられています。 CCUSの登録情報が適切に能力評価に反映され同一技能・同一賃金が実現すれば、有能な海外のパートナーたちが安心して長く仕事を続けられるでしょう。
施策⑥施工能力等の見える化評価の促進
国はCCUSの登録情報や技能者の能力評価をもとに、専門工事企業の施工能力等を職種ごとに評価し「見える化」を進める方針です。
企業は「企業の基礎情報」「所属技能者の施行能力」「コンプライアンス」の評価項目について星マークの数で評価され、マークの付いた見える化ロゴやバナーを使用できるようになりました。企業にとっては元請企業や求職者に対する格好のアピールとなり、求職者にとっては優良企業を見分ける良い手掛かりになるでしょう。
CCUS利用拡大3か年計画第1弾は経験・技能に応じた処遇改善のための施策を見てきました。次回の第2弾は「CCUSを活用した事務作業の効率化・省力化」の施策を紹介します。