国土交通省は令和6年から「CCUS(建設キャリアアップシステム)利用拡大に向けた3か年計画を掲げました。そこで前回から3か年計画の施策とメリットを「①経験・技能に応じた処遇改善」「②事務作業の効率化・省力化」「③就業履歴の蓄積と能力評価の拡大」の3回に分けて紹介しています。
シリーズ第2弾の今回は、CCUSを活用した事務作業の効率化・省力化について解説します。
「CCUSを活用した事務作業の効率化・省力化」のロードマップ
国はCCUSを共通のデータ基盤と捉え、建設業のあらゆる業務・労務関連システムと連携する方針を掲げました。CCUSを活用することで事務作業を効率化・省力化し、労働環境のさらなる改善につなげる狙いです。
国土交通省は事務作業の効率化・省力化ロードマップを以下のように掲げていますが、実施状況に応じて柔軟に見直す方針です。
令和6年度 | 令和7年度 | 令和8年度~ | |
CCUSの登録データを活用した事務作業削減 | 施工体制台帳の提出義務合理化 | 連携できるデータの範囲の拡大(入退場データ等) | |
労務安全システム等との情報連携 | |||
技能者がアプリで、自身の経験等のデータを確認 | 技能者アプリの導入 | 資格証携行義務への対応 | |
建退共掛金の積立状況の表示 | |||
CCUSと建退共の完全連携 | 建退共のCCUS活用電子申請推進 | CCUSと建退共との連携完結 |
引用:国土交通省「CCUS 利用拡大に向けた3か年計画(概要)」
施策①労務安全システムとの情報連携による事務の効率化
国はCCUSと「労務安全システム」を連携させ、以下の勤怠管理や各種帳簿・安全書類の作成を効率化する方針を掲げています。
- 協力会社や作業員の登録・管理
- 安全書類の作成・管理
- 現場入退場情報の把握
- 現場従事時間と賃金の把握
- 帳票作成の効率化
例えば現在はシステム連携によって、現場でCCUSカードをタッチしなくても電話1本で入退場処理が可能です。今後は従業員の労務管理が容易になるだけでなく、将来的にはカードリーダーが不要になるなど、現場での利便性がいっそう高まるでしょう。
施策②施工体制台帳の作成・提出義務に関わる作業の合理化
国は現在施工体制台帳をCCUSと連動させ、台帳の電子閲覧によって作成・提出義務を果たせる仕組みを構築しています。
施工体制台帳とCCUSが連動すれば、CCUS内の技術者情報などが反映された施工体制台帳を出力することが可能です。なお現在は、ICTで施工体制を確認できる場合には、施工体制台帳の写しの提出を省略できるよう法改正が行われています。CCUSデータを台帳の電子閲覧に活用できれば、業務工数の大幅な削減につながるでしょう。
施策③CCUSを活用した現場管理作業の効率化
改正建設業法のICT指針(努力義務規定)の中に、CCUSを活用した現場管理作業の効率化が加えられました。CCUSの登録データを労務安全システムから利用できるようにすることで、現場管理業務における以下の効果が期待できます。
- 入退場管理の効率化
- 事務作業の負担軽減
- 出面管理業務(建設現場に出入りする作業員や協力会社の出勤状況管理)の効率化
- 作業の進捗状況確認の容易化
- 下請への支払いの適正化
施策④技能者のCCUS登録情報の確認の簡素化
これまでCCUSの技能者登録情報はPCにログインして見るしかありませんでしたが、スマートフォンで容易に確認できるアプリが開発・リリースされました。
「建キャリ」アプリを使えば、CCUSに登録された基本情報や就業履歴、資格者証などをスマートフォンから手軽に確認が可能です。アプリはiPhoneでもAndroidスマホでも無料でダウンロードでき、建退共掛金納付状況や能力評価サポート、CCUS応援団特典などもチェックできます。
アプリによってCCUS情報が利用しやすくなるだけでなく、今後は紙の資格者証を携行する必要もなくなるでしょう。もちろん現場を異動しても情報が反映されるので安心です。
施策⑤CCUSと建退共との連携完結による事務の効率化
国はCCUSと建退協の連携も進めています。今回の取り組みによって、CCUS上の就業履歴情報をCSV連携で建退協の電子申請に取り込めるようになりました。
従来の証紙貼付方式では、現場を異動するごとに建退協の事務手続きが発生していました。しかし技能者がCCUS登録していれば、今後は現場を移動しても退職金ポイントが自動的に合算されるため、建退協の事務手続きが大幅に簡略化されます。
今後も順次システムの改修が行われる予定のため、事務担当者と技能者双方の利便性はさらに高まるでしょう。
参照:国土交通省「建退共 【電子申請方式・CCUSとの連携】Q&A①」
施策⑥適正な一人親方の確認の効率化
今後CCUS上で実務経験や経験ポジション、技術が不十分な一人親方を確認できる機能が追加され、「適正な一人親方」の確認が容易に行えるようになります。
これまでは事業者が雇用していながら一人親方として扱い、社会保険料負担を免れるケース(偽装一人親方)が散見されていました。しかしCCUSの普及によって一人ひとりの経験や技能が明確になるため、本来の技量を持つ一人親方と偽装一人親方をシステム上で見分けやすくなり、社会保険加入が後押しされると予想されます。
CCUS利用拡大3か年計画シリーズ第2弾は、CCUSを活用した事務作業の効率化・省力化の取り組みを紹介しました。国は今後、CCUSを活用した現場管理などの効率化事例を紹介し、広く業界に共有していく方針です。