2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、働き方改革が本格化しました。実際に、業界全体で推進されている「4週8閉所」がどの程度進んでいるのか気になるところです。
そこで今回は、日本建設業連合会(日建連)の最新データに基づき、建設業界週休二日の「今」について、土木・建築分野別に比較し、今後の見通しと課題について詳しく解説します。
建設業界における「4週8閉所」「週休2日」とは?
建設業界でよく使われる「4週8閉所(4週8休)」ですが、そもそも「週休2日」とはどのような違いがあるのでしょうか。
それぞれの定義を見ていきましょう。
- 4週8閉所:4週間を通じて8日の休日を取得する制度
- 週休2日(一般的な解釈):休日が2日間ある週を1カ月に1回以上設ける制度
- 完全週休2日制:毎週必ず2日の休日がある制度
- 土日閉所:毎週土曜日と日曜日を現場閉所日とする制度
このように、休日取得のサイクルや柔軟性に違いがあります。4週8休の場合は、月の前半(後半)に集中して働き、あとの半分でまとめて休むといったことも可能です。
国土交通省はこれまで、工事期間全体での週休2日の確保(対象期間の現場閉所率が28.5%以上)を推進してきました。しかし、現在は単に休日の「量」を確保するだけでなく、土日休みを基本とするなど、休日の「質」を重視する方針へ転換しています。
建設業界における4週8休・週休2日の進捗状況
日建連の「週休二日実現行動計画 2024年度上半期フォローアップ報告書」によると、建設業の4週8休達成率は着実に向上しています。
4週8休達成状況(対前年) | 従業員の4週8休取得率(対前年) | |
土木・建築全体 | 61.1%(11.7ポイント向上) | 88.7%(7.3ポイント向上) |
土木 | 73.0%(10.4ポイント向上) | 91.0%(5.3ポイント向上) |
建築 | 49.3%(13.7ポイント向上) | 86.6%(9.3ポイント向上) |
土木・建築ともに、2019年から2024年にかけたこの5年間で現場の4週8休達成率は2倍以上に改善しており、特に土木分野での進捗が目立ちます。
民間デベロッパーなどが発注する建築工事では、工期遵守やコスト管理が厳しいケースがあるのに対し、土木工事は国や地方公共団体が発注する公共工事が多く、発注者自身が週休2日を強力に推進する傾向があります。
そのため、公共工事のほうが休暇を取得しやすい傾向にあるといえるでしょう。
参照:日本建設業連合会「週休二日実現行動計画 2024年度上半期フォローアップ報告書」
建設業「4週8休」定着に向け解決すべき課題
官民一体の取り組みにより建設業界の週休2日化は進んでいますが、完全定着にはいくつかの課題が残っています。
- 深刻な人材不足
若年層の入職者減少と高齢化により、一人当たりの業務負担が増加の傾向 - 天候に左右される工期調整
悪天候による工事の中断が工期遅延に直結 - 日給月給制労働者の収入減少
休日が増えることで、日給月給制で働く技能労働者の手取り収入が減少
しかし、近年はICT施工やDXが推進されたことにより、各工程の生産性が高まり、人材不足の課題は段階的に改善されつつあります。
技能者の収入についても、日給制から月給制に移行するなど改善される見込みです。国が工期の平準化を推進しているため、今後は年間の繁閑差が減少し、事業者側にとって日給制から月給制へ移行するハードルが下がるとみられます。結果、建設業界で働く人の収入安定化につながるといえるでしょう。
建設業界で完全週休2日を実現する国の取り組み
国は建設業界の完全週休2日を定着させるため、さまざまな制度改正を進めています。
その一つとして国は2025年度から、土日を休日とする「完全週休2日」を達成した工事に対し、労務費や経費を上乗せして支払う新たな補正係数を導入しました。天候や猛暑を理由として土日に作業した場合であっても、平日に休みを振り替えれば補正係数の適用が認められます。
この改定にともない、従来の「通期」での休日確保を前提とした補正は廃止され、月単位、さらには週単位での休日取得が標準と見なされるようになります。事業者にとっては、コストの不安なく労働者の休日を確保しやすくなるでしょう。
日建連では、2026年3月までにすべての建設現場で4週8休を達成するという目標を掲げ、定期的なフォローアップを実施しています。さらに、新たに「年間休日日数」の調査を開始し、より実態に即したフォローアップを強化する方針です。
実際、国が率先して改革を進める公共工事では、4週8休・完全週休2日化が進んでいるだけでなく、元請けとの休日調整も行いやすくなっています。
建設業界の中でも週末に休みを取りやすい環境が整いつつあるので、ワークライフバランスを重視して働きたい方は、土木工事の仕事を検討してみてはいかがでしょうか。