現在、日本建設業連合会(日建連)で各企業とともに「快適職場」活動という職場環境改善を推進していることはご存じでしょうか。
建設業で働く人の安全と健康を守り、業界の将来的な担い手を確保するためには職場環境の改善が不可欠です。今回は建設業における職場環境の課題と日建連の「快適職場」活動による職場環境改善の取り組みを紹介します。
日建連の快適職場認定制度とは
「快適職場認定制度」とは、日本建設業連合会(日建連)が働きやすい作業環境を整備する企業を認定する制度のことです。
「仕事による疲労やストレスを感じることの少ない、働きやすい職場づくり」を目的に、厚生労働省が以下の「快適職場指針」を示しています。
- 空気汚染やにおい、温度などで不快感を感じない作業環境
- 心身の負担を軽減する作業方法
- 疲労やストレスを効果的に癒せる疲労回復支援施設の整備
- 清潔で使いやすい洗面所・トイレの設置と整備
建設業には複数事業者の請負関係や屋外作業といった特性もあることから、環境改善の指針が別途通達されています。これらを受け、日建連は建設業の特性を考慮した独自の快適職場基準を設け、以下のような項目を追加しました。
- 感染症対策を必須項目化(2023年6月以降配点なし)
- 時間外労働規制
- CCUSカードタッチ率
- 建退共の完全支払い
- 労務費見積もり尊重宣言等への対応状況
なお、日建連が取り組みを始めた当初は表彰制度でしたが、2021年からは企業・JVによる自己採点・自己認定制度へと変更されました。
日建連が快適職場活動を認定制度とした背景には、企業に自主的な働きやすい環境整備を促し建設業のイメージアップを図る狙いがあります。快適職場活動によって健康災害の防止や働きやすさ、仕事の充実感につながることが期待されます。
快適職場の自己認定の認定基準
企業が快適職場の自己認定を行う際には、働く人の心身の負担軽減や作業方法の改善、働き方改革の取り組みなどを以下の基準で採点・審査します。
自己認定の規定 | 内容の詳細 |
自己認定を行える「適合作業所」の基準 | 着工から1カ月または契約日から3カ月以上経過し、かつ一定以上の項目が基準に適合している作業所 |
採点方法 | 1施策の実施で1ポイント~各項目の最大ポイントまで加点※必須項目の実施が前提 |
満点 | 30点(外国人技能者がいない場合は27点) |
合格ライン | 全グループの合計点が満点の70%以上で「適合作業所」80%以上で「プラチナ適合作業所」 |
参照:日本建設業連合会「快適職場に係る日建連基準」
日建連の採点基準表に記載されているグループと項目は以下のとおりです。
「安全衛生」グループ
- 空間的な安全性確保
- 視覚・嗅覚・聴覚的な快適性の管理
- 建設技能者の身体負担や労力の軽減
- 感染症対策
- 安全・健康に関する意識啓発
例えば、IoT機器などの先端テクノロジーによる作業の安全確保や熱中症対策、さらに健康指導やメンタルヘルス対策なども「安全衛生」グループの施策に挙げられます。
「働きやすさ」グループ
- 詰所内の施設、設備
- 外国人技能者の就業に対する配慮
- 労働時間や就労体系の改善
働きやすさの項目には、疲労回復のための休憩施設の設置や、企業ごとの特別休暇制度などが該当します。
.「処遇改善・公益性」グループ
- 社会保険・建退共への加入推進
- 建設キャリアアップシステムの導入と推進
- 労務費見積尊重宣言
- 建設業のイメージアップ活動
福利厚生の充実化や、現場周辺への配慮や地域でのボランティア活動などがこのグループに該当します。CCUSによる建退協掛け金の完全支払いも、日建連が推進する処遇改善施策の1つです。
快適職場の自己認定の課題と改善施策
多くの業界で職場の安全衛生や健康経営が推進される中、建設業界では作業の安全性向上には注力するものの、働きやすさの対策が後回しになる傾向にありました。作業方法の改善や職場の快適性については、精神論で片付けられることが多かったことも事実です。
しかし最近の日経連の取り組みでは、安全性と同程度に従業員の健康増進が尊重され、それと同時に業界のイメージアップにも注力しています。
ここで「快適職場」プラチナ認定企業による実際の取り組み事例を紹介します。
【安全衛生】
- 広大な敷地の現状把握に複数台のUAV(ドローン)を使用
- 粉塵を抑制するために坑内の仮舗装を実施
- 寒冷地の作業削減のために構造物をプレキャスト化
- 夏場に冷却性の高いヘルメットや熱中症予防用スマートウォッチを配布
【働きやすさ】
- カーペット・畳敷きの休憩スペースの設置
- シャワーや仮眠室などを備えた移動式リフレッシュカーを設置
- 休憩所入口にきゅうりやトマト、ゴーヤなどのプランター菜園を設置
- トイレの洗面所に給湯設備を設置
- 家族の記念日に平日休める休暇制度を制定
【処遇改善・公益性】
- 社会保険や建退共への加入を呼びかけるポスターの掲示
- 週1回の敷地周辺の道路の一斉清掃
- 見学会の開催や地元主催のイベントへの出展
3つのグループの中では、働きやすさの施策にウエイトが置かれている印象です。日建連と企業のこうした働きやすさアップの取り組みにより、建設業界の職場環境は今後ますます快適になることは間違いありません。
建設業界のストレスフリーな作業環境を実現する「快適職場」づくりは、業界のホワイト化とイメージアップにも貢献しているといえそうです。