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政府の取り組みって実際どうなの?建設業の賃上げと働き方改革

建設業の業界団体と政府は、建設に携わる業界の新たな担い手確保のために意見交換を重ねています。両者の話し合いによって、働く人の処遇改善に関わる多くの施策が生まれました。

今回は団体と政府の意見交換の内容をもとに、建設業界の賃上げや働き方改革に関する政府の取り組みを紹介し、今後の展望についても解説します。

建設業界の賃上げと働き方改革に向けた政府の取り組み

2024年3月、政府と建設業団体との賃上げ、働き方改革についての意見交換会が行われ、同日に働き手の処遇に関わる建設業法等の改正案が閣議決定されました。

ここでは意見交換会で話し合われた内容をもとに、建設業の賃上げと働き方改革に向けた政府の取り組みを紹介します。

賃金の適正化と行き渡り

政府と建設業各団体は、2023年からの1年間で技能者の賃金のおおむね5%アップを目指してきました。そして建設業界の担い手確保のために、2024年からの5%を十分上回る賃金上昇と、適正な賃金支払いを目指し、以下の方針を掲げています。

  • 総価での原価割れ契約の禁止
  • 資材高騰にともなう労務費へのしわ寄せ防止

なお、国は2024年12月に「建設業法令順守ガイドライン」を改定し、その中で請負代金の変更の可能性がある場合は、契約締結前に取引相手へ通知することを義務化しました。これにより、資材高騰などによる契約変更の可能性を事前に書面で交わせば、契約後でも価格転嫁の協議が行えるようになります。

発注者側が一方的に協議を拒絶すると建設業法違反となるほか、契約変更の協議を前提としない契約も違反となるため、下請までの賃金適正化につながると考えられます。

さらに国は建設Gメン※を倍増し、監視・指導体制を強化することも決定しました。

※建設Gメン:建設工事の取引において適正な請負代金や工期、価格転嫁で契約が為されるよう監視・指導する職員のこと。

建設工事の請負契約における労務費の見積額や価格交渉の実態などを調査し、改善指導を行うのが建設Gメンの役割です。2024年(令和6年)からは調査の対象を拡大し、さらに専用通報窓口(駆け込みホットライン)も活用しながら、国は建設業法違反の把握と指導・勧告を強化しています。

政府と業界団体の意見交換会では、下請や自治体工事の受注金額が低く抑えられる問題が指摘されていましたが、契約の監視体制が強化されることで、工事請負金額の適正化が進むと考えられます。

働き方改革の推進

国や都道府県が発注する工事で原則化された週休2日工事を、市町村発注の公共工事でも浸透させるために、国と都道府県が働きかけを行っています。また、今後は夏季の猛暑による作業不能日を盛り込んだ工期延長もルール化されるため、ゆとりある工期設定が浸透するでしょう。

労働時間の監視については、国土交通省が厚生労働省などと連携して実地調査と是正指導を行う方針です。

さらに国は時間外労働を削減するために、以下のような業務効率化と生産性向上を推進しています。

  • 労働時間削減の成功事例集を作成、業界で共有
  • 直轄工事の工事関係書類の簡素化
  • 技術者業務の社内外での分担

一例として、公共工事発注者への施工体制台帳の提出義務については、ICTによる施工体制確認で代替が可能となりました。また、これまで監理技術者や営業所技術者は工事現場に「専任」が必要でしたが、ICT機器で工事現場の状況が確認できる場合においては、一定の金額・現場数の範囲で「兼任」が可能となっています。

ICTの活用で、労働時間を短縮しながら現場の人手不足を解消することが国の狙いです。

政府による賃上げ・働き方改革の取り組みの成果

2025年3月から適用される公共工事設計労務単価は、全国全職種単純平均で対前年比6.0%引き上げられ、全国全職種加重平均で24,852円となりました。2013年度から13年連続の引き上げとなり、もちろん法定福利費(事業者負担分)、労務管理費、安全管理費など(別途10,189円)は含まれません。

労働時間についても、2016年の2,101時間から2023年は1,978時間と、徐々に減少しており、業務時短の取り組みの効果が表れています。週休2日工事の実施状況については、2023年度に完成した対象工事の98.4%で週休2日を達成し、対前年度比1.3 ポイントの増加と、進展を見せました。

参考:国土交通省「令和7年3月から適用する公共工事設計労務単価について~今回の引き上げにより、13年連続の上昇~
参考:日本建設業連合会「4.建設労働|建設業の現状
参考:国土交通省「令和5年度完成工事の 98%以上で週休2日を達成!

今後の建設業界の賃金と働き方の展望

2024年に建設業法、品確法、入契法のいわゆる「担い手三法」が改正されたことで、今後直轄工事を中心に、建設現場の労働環境ホワイト化がいっそう進むと考えられます。

国土交通省は2025年の秋~冬を目処に「著しく低い労務費等の禁止」の「労務費等」を省令で規定することとしています。こうした国の取り組みにより、契約の適正化が小規模工事にまで及べば、事業者規模や地域によらず、労務単価アップが働く人すべての賃金に適切に反映されるでしょう。

さらに、今後は公共工事受注者のICT活用が努力義務化され、先進的企業以外にもICT化に取り組む必要が生じたことで、建設業の業務全体がスマート化される見込みです。

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