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日建連が描く建設業の10年先を見通す未来ビジョンとは?後編

2回シリーズでお届けしている「建設業の長期ビジョン2.0」。前編では、日建連が掲げる「建設業の長期ビジョン2.0」の全体像と、2035年に向けた建設市場および担い手の見通し、「けんせつのチカラの強化」に向けた具体的な施策を紹介しました。

後編では、建設業が「選ばれる産業」へと変革するための具体的な施策に焦点を当て、さらに、サプライチェーン全体でのWin-Win関係を築くための取り組みも紹介します。

参照元:日本建設業連合会「スマートなけんせつのチカラで未来を切り拓く-建設業の長期ビジョン2.0

長期ビジョン2.0「選ばれる産業への変革」の具体的施策

建設業界が持続的に発展するためには、新4K(給与がよい、休暇が取れる、希望が持てる、かっこいい)を実現し、未来を担う人材から「選ばれる産業」へと変わらなければなりません。ここでは、建設業を魅力ある産業へと変革するために、日建連が掲げた具体的な施策を紹介します。

「選ばれる産業への変革」施策①異次元の処遇改善

日建連は年7%以上の持続的な賃上げや、全産業平均を上回る「40代で年収1,000万円以上」という異次元の処遇改善を実現するために、以下の施策を掲げました。

  • 技能労働者の直接雇用(社員化)の推進
  • 「労務費の基準」策定による労務費の行き渡り
  • 資材高騰に伴う適切な価格転嫁の徹底
  • 建設キャリアアップシステム(CCUS)完全実施

働き方改革においては、フレックスタイム制や新技術の活用によるテレワークの導入など、多様な働き方と休み方を選べる制度設計を進めます。さらに、すべての現場で土日祝日の一斉閉所をめざすとともに、猛暑日の作業回避と工期適正化を両立するために、労働時間規制を柔軟化する方針です。

「選ばれる産業への変革」施策②人材育成の抜本的強化

日建連では、技能労働者すべてが体系的に技能を習得できるように、業界標準の教育システムを構築する方針を掲げています。具体的には、教育施設での「学習」と建設現場での収入を得ながらの「実践」を効果的に組み合わせることで、3年程度で体系的な技能を習得できるというものです。

教育コンテンツにはVRなどの最新技術を活用し、学習効率と魅力を高めつつ、併せて学習プログラムに対応できる指導者の育成も進めます。教育体系が業界標準化されることで、働く人は勤め先に関わらず着実なキャリアアップを実現できるでしょう。

「選ばれる産業への変革」施策③多様な人材活躍

日建連は以下の取り組みを通じて、外国人材や女性、高齢者などの多様な人材が、能力を最大限に発揮し無理なく働ける環境を構築する方針を掲げています。

  • パートタイムなど多様な働き方の導入
  • DXによるテレワーク可能業務の拡大

外国人材については、育成就労から特定技能外国人、幹部候補へとステップアップできるキャリアパスの確立を目指します。さらに、来日前からの日本語教育や技能習得支援を通じて、外国人が日本の現場にスムーズに溶け込めるようサポートする方針です。

また、日建連では2035年度の女性就業者数を100万人(うち女性技能労働者20万人)とする目標を掲げ、女性が長く働くための各種制度設計を進めます。併せて高齢者の豊富な知識と経験を現場に活かすために、再雇用制度の拡充などにより、就業体系の選択肢を広げる方針です。

多様なバックグラウンドを持つ人材が協力し合うことで、建設現場に新たな視点が芽生え、イノベーションがもたらされることが期待できます。

長期ビジョン2.0「すべてのサプライチェーンにおけるWin-Win関係の構築」の具体的施策

建設業界の持続的な成長と労務費の行き渡りが実現されるためには、発注者、元請、協力会社が従来の力関係を超えて協力し合うことが不可欠です。日建連では「すべてのサプライチェーンにおけるWin-Win関係の構築」の方針を掲げ、以下の取り組みを推進しています。

  • 協力会社との「共利」に向けた経営層の意識改革
  • 研修、セミナーを通じた契約リテラシーの向上
  • 価格転嫁のスムーズ化(公共発注者が率先)
  • 建設Gメン、ADRによる業界の透明性向上

「共利」とは、元請と協力会社が対等なパートナーとして協力し、共に利益を享受できる関係を築くことです。具体的には、適正な工期設定や支払い条件の確保、リスクの公平な分担などが挙げられます。特に公共工事においては、規範となる適正な契約慣行が従来以上に求められるようになりました。

さらに、建設Gメンによる指導や建設工事紛争審査会による紛争解決を通じて、業界全体の健全性を高めていく方針です。2026年1月には下請法改正(法律名も取適法に変更)も控えていることもあり、発注者・受注者間の関係適正化が進み、働く人の待遇も大きく改善されるでしょう。

建設業の長期ビジョンで10年後は選ばれる産業に

前編・後編の2回にわたって、日建連の「建設業の長期ビジョン2.0」における建設業の変革の取り組みを紹介してきました。

技術革新による建設プロセスのスマート化、異次元の処遇改善による魅力的な職場づくり、サプライチェーン全体での適正な関係構築により、2035年の建設業は「選ばれる産業」に変わると考えられます。従来以上にキャリアパスも明確化され、待遇改善も見込まれるため、建設業で働く魅力はいっそう高まるでしょう。

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