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建設業界で働く労働者の賃金アップ!令和6年3月~公共工事の労務単価引き上げ

令和6年(2024年)3月から、建設業従事者の賃金アップを目的とした新しい公共工事設計労務単価が適用されています。

今回は国による公共工事設計労務単価の引き上げが、どのように労働者本人の収入アップにつながるのか、制度と国の指針の詳細を紹介します。

建設業「公共工事設計労務単価」引き上げとは

はじめに今回の公共工事設計労務単価引き上げの概要と目的を解説します。

12年連続の労務単価引き上げ・前年度比5.9%アップ

「公共工事設計労務単価」とは国が公共工事の積算時に使用する労務単価のことで、所定労働時間内8時間当たりの単価として、労働者に支払われる賃金のベースとなる値です。

労務単価は最近の労働市場の実勢価格を適切・迅速に反映すべく、公共事業労務費調査に基づき47都道府県・51職種別に設定されています。

平成25年度(2013年度)から12年連続の引き上げとなり、今回は全国全職種単純平均で前年度比5.9%アップ、全国全職種加重平均値は23,600円となりました。なお、過去2013年度においては社会保険の未加入者が加入できるよう、法定福利費の本人負担分相当額を労務単価に反映した経緯があります。

公共工事設計労務単価の決定には、時代ごとの課題を解決する国の指針が働いているのです。

引き上げの目的は時間外労働上限規制への対応

今回の労務単価引き上げには、時間外労働の上限規制に対応する目的があります。

労働者の賃金が据え置かれたまま労働時間規制や週休2日制が導入されると、日給月給制の技能労働者は収入が不安定になってしまいます。2022年首都圏賃金実態調査分析報告書によると、首都圏において日給月給で働く技能労働者(常用、手間請、材料持ち)の割合は68.3%でした。ここからも建設業界には日給月給制の労働者や一人親方の割合が多いことが分かります。

国は建設現場の労働時間が短縮されても技能労働者の収入が補われるよう、労務費計上のベースとなる労務単価の引き上げに踏み切ったのです。

労務単価引き上げ分を建設労働者賃金に還元する施策

労務単価の引き上げが本当に労働者の賃金アップにつながるのか、気になっている方もいるでしょう。

ここでは労務単価の引き上げが労働者の賃金に適切に反映されるための国の施策を紹介します。

公共工事設計労務単価の定義の明示

建設業界特有の受発注構造により、現場技能労働者の賃金設定はあいまいになりがちでした。そこで国は技能労働者の賃金の前提となる、公共工事設計労務単価の定義づけを明確化しています。

公共工事設計労務単価に含まれるものとして、以下の費目があげられています。

  • 基本給相当額:個人負担分の法定福利費を含む
  • 基準内手当:当該職種の通常の作業条件及び作業内容の労働に対する手当
  • 臨時の給与:賞与など
  • 実物給与:食事の支給など

一方で、公共工事設計労務単価に含まれない費目は以下のとおりです。

  • 時間外・休日・深夜労働の割増賃金
  • 各職種の通常の作業条件または作業内容を超えた労働に対する手当など
  • 現場管理費(事業主負担分の法定福利費、研修訓練に要する費用など)
  • 一般管理費

国は改めて労務単価の範囲を明示し、労務費の適切な見積もりにつなげる方針です。

労務単価と雇用にともなう必要経費分の積算上の区別

国は今回の改定で積算時の記載方法についても指針を示しています。

これまでは建設労働者の賃金計算のベースであるはずの公共工事設計労務単価が、工事費の見積時に「労働者の雇用に付随する諸経費と合計」して扱われる傾向がありました。結果として必要経費分の工事費が値引きされ、労務費アップ分が技能労働者の賃金に還元されていない実態があったのです。

そこで国は雇用にともなう必要経費分(法定福利費、労務管理費、安全管理費など)について、別途以下の項目で積算し、労務単価とは分けて記載するよう指示しています。

  • 共通仮設費
  • 現場管理費

具体的には「公共工事設計労務単価と、労働者の雇用にともなう必要経費を含む金額とを並列表示し、労務単価に必要経費が含まれていないことを示す」などです。

今後は事業者が下請代金から必要経費を値引きすることは不当な行為となります。あいまいであった労務費の線引きを国が明確にしてくれたため、今後は技能者が労務費アップの恩恵を受けやすくなるでしょう。

建設業労務単価アップが賃金に反映されるための仕組み

国による労務単価アップが給料に反映される仕組みづくりが進む中で、建設業界に今後見込まれる変化を解説します。

日給月給制の月給化

もともと繁忙期と閑散期の差が激しく、天候にも左右される職人の給与体系として、働いた分だけ支払われる日給制・日給月給制が労使双方にとってデフォルトでした。

建設業は正社員でも日給月給で働く労働者の割合が多い特徴がありますが、近年は人材確保の観点から、土木工事を中心に社員雇用と月給化の動きが進んでいます。

月給制への移行が進み職人の収入が安定すれば、建設業界に若手の担い手も増えると期待できます。

CCUSによる給与支払いの透明化

CCUS(建設キャリアアップシステム)の浸透により、労働者の勤怠と給与管理の透明化が期待されます。

今後CCUSの活用が進めば、元請企業から下請企業、技能者の賃金までのお金の流れが可視化され、労務単価の引き上げ分が技能者へ適切に還元されるでしょう。

技能に応じた賃金相場の浸透

CCUSの職能ランク付けと連動し、今後は労働者の技能に応じた賃金相場の普及・浸透が進むと考えられます。

すでに大手・中堅ゼネコンを中心にCCUSが浸透しつつあり、技能レベルに応じた手当支給の動きが拡大する傾向です。

賃金相場の基準としては、2023年10月には建設産業専門団体連合会が技能者の職種別最低年収の目安額を公表しています。目安年収は今後もアップデートされ、時代のニーズや経済情勢に最適化されていく見込みです。

今回の記事で紹介した建設業の賃金アップは、働き方改革と併せて業界の労働環境を向上させる1つの切り札となるに違いありません。

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