CCUS(建設キャリアアップシステム)が導入されて5年が経過しました。しかし、2024年1月現在システムに登録していない建設技能者もまだ多いようです。
CCUSの技能者登録にはさまざまなメリットがあります。とはいえ、手続きの手間と費用がかかるため、つい先延ばしになっている方もいるかもしれません。
今回の記事では、建設技能者がCCUSに登録するメリットを2回にわたり解説します。前編ではCCUSのキャリア形成上のメリットを紹介しますので、技能者登録を考える参考にしてください。
CCUSの概要と技能者の登録状況
CCUS(建設キャリアアップシステム)は、技能者の就業履歴や保有スキルを業界横断的に登録し、蓄積していくシステムです。
もともと建設技能者は職場を移りながら働くため、スキルを適正に評価されず、一貫したキャリアを形成しにくい傾向にありました。システムにより技能者の保有能力を可視化し、技能者のキャリア形成の促進と、能力・経験に応じた賃金体系の確立を図ることが、CCUSの主な狙いです。
CCUSには同時に、建設業の社会保険や年金、建設業退職金共済制度(建退共)の加入率を向上させる目的もあります。従業者の高齢化が進む建設業で、若い世代が長く安心して働ける環境を整備するために、CCUSを改革の軸に据えているのです。
国土交通省の調査によれば、2023年12月時点での技能者登録者数は約134.6万人。2022年の建設業技能者数が約302万人ですので、技能者の登録率は約44%ほどです。制度の普及がいまひとつなのは、登録するメリットがあまり知られていないからかもしれません。
CCUSに技能者登録するキャリア形成上のメリット
CCUSに技能者登録すると、キャリア形成と経済面で多くのメリットがあるため、早めに登録するのが得策です。日々現場で仕事をする中では、なかなか感じづらい登録のメリットについて、まずはキャリア形成上のメリットから紹介します。
自分のキャリアとスキルを証明できる
CCUS技能者登録の最大のメリットは、自分のキャリアとスキルを証明できることです。
転々と職場が変わることの多い建設業技能者は、職場が変わる場合や、離職・復職をする際に、明確な就労証明を得られませんでした。
しかしCCUSに登録すれば、現場入場時にカードをリーダーにタッチするだけで、いつ・どの現場に・どの職種で・どの役職(職長など)で働いたのかが記録・蓄積されます。さらに講習の受講歴も残るため、キャリアとスキルの両方を証明でき、そのまま職務経歴書として活用することが可能です。
資格制度のない職制についても、就労履歴でキャリアの証明ができるメリットは大きいといえます。
スキルが適正に評価される
スキルが適正に評価されることも、CCUS技能者登録のメリットです。
CCUSのデータがあれば、登録者のキャリアを正確かつ簡単に、数値での確認が可能です。求職者にとっては、就労記録や受講履歴を就職時のアピールに使えます。
事業者側にとっても、就労データがあれば技能者のスキルを把握しやすく、適材適所の配置ができます。CCUSでは技能者の評価基準が明確化されているため、技能者のスキルや経験に見合った、適正な評価を簡単に行えるのです。
キャリアアップをイメージしやすい
CCUSでは技能者のスキルをレベル分けして可視化できるため、キャリアアップをイメージしやすいことも、技能者登録をするメリットです。
CCUSでは登録技能者の技能レベルを、以下の4段階に分類し、カードの色で表しています。
- レベル1:白・初級技能者(見習い)
- レベル2:青・中堅技能者(一人前)
- レベル3:銀色・班長レベル
- レベル4:金色・管理者、マネージャーレベル
レベルを決定する要素は、CCUSに記録されている就労日数、保有資格と講習受講歴、職長・班長経験などです。レベルアップ判定を受けて合格すれば、上位ランクに昇格できます。
必ずしも段階を踏んでランクアップする必要はなく、白から青色を経ずに銀色といったランクアップも、判定次第では可能です。登録当初に規定のマネジメント経験を証明できれば、「登録基幹技能者」としてレベル4の金色からスタートできるケースもあります。
CCUSのレベル分けでキャリアアップの道筋が見えてくれば、仕事へのモチベーションも高まるのではないでしょうか。
※レベルアップ判定を受けるためには、CCUSの「詳細型」に登録している必要があります。
ここまで、CCUSに技能者登録するキャリア形成上のメリットについて紹介しました。次回のシリーズ後編では、CCUSの金銭的・経済的メリットについて解説します。