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建設業界で働くなら知っておきたい!ICT施工の基本と導入の取り組み(前編)

2025年現在、国土交通省がICT施工の実用化に向けた取り組みに力を入れています。日進月歩の建設技術を活かしたICT施工の現状はどのようになっているのでしょうか。

そこで、ICT施工の概要や目的、建設事業者に対する国の導入支援、事業者や働く人にとってのメリットを3回シリーズで紹介していきます。1回目はICT施工の概要と目的、導入における課題について解説します。

ICT施工の基本と概要

ICT施工とは、建設現場に情報通信技術(ICT:Information and Communications Technology)を取り入れ、生産性や品質の向上を図る取り組みのことです。

ICT施工はICT土木とも呼ばれ、国土交通省が2016年度から推進する「I-Construction」の柱の一つとして位置づけられています。国が示すICT施工のフレームワークは以下の通りです。

  1. 3次元起工測量
  2. 3次元設計データ作成
  3. ICT建機による施工
  4. 3次元データを活用した施工管理
  5. 3次元データによる納品

国は調査・測量、設計、施工、検査、維持管理・更新の全プロセスでICT技術を活用することで、各工程の省人化と高精度化、作業の効率化を推進しています。

さらに、2024年に掲げられた「ICT施工StageⅡ」では、工程ごとの効率化に留まらず、建設現場のすべての情報をリアルタイムに可視化し、全工程の一元管理を目指します。

全工程の一元管理が実現すれば、建設機械の稼働状況や工程の進捗状況に応じて、最適なタイミングで建機を操作したり、稼働状況に応じた最適な人員配置を行ったりすることも可能です。

ICT技術を通じて工程のムリ・ムダ・ムラを排除し、建設業のさらなる省人化を図ることが国の狙いです。ICT施工の標準化は、建設業界の働き方改革を後押しし、将来の担い手確保にもつながるでしょう。

ICT施工導入の目的

国土交通省がICT施工の導入を推進する最大の目的は、深刻化する技術者の高齢化と人手不足への対策です。

日本建設業連合会の統計によれば、建設業の技能者数は1997年の464万人から2024年には303万人へと大幅に減少しています。また、20年間で65歳以上の就業者が2倍以上に増加する一方で、20歳以下の従業者は約36%減少し、30代・40代の中核層も約25%減少している状況です。

こうした業界の現状に対処すべく、国は工事の各工程にICT技術を導入し、業務の自動化と効率化を推進しています。また、熟練技術者の技をデジタルデータ化し、若手作業員にデータで伝承する目的もあります。

さらに、作業の効率化によって長時間労働を解消し、働き方改革の推進にもつなげる方針です。ICT技術によって快適で安全な現場環境を整備し、3K(きつい・汚い・危険)のイメージを払しょくすることで、建設業界の新しい担い手を確保することが国の最大の狙いです。

参照:日本建設業連合会「建設労働|建設業の現状

ICT施工導入における課題

一方で、ICT施工の導入推進には以下の課題もあります。

  • 導入コストの負担
  • 専門人材の育成
  • 現場の意識改革
  • データ形式の標準化
  • 発注者側の体制整備

最新の測量機器やICT建機、関連ソフトウェアは高額なため、特に中小企業にとっては初期投資が大きな障壁です。また、ICT施工の専門知識を持つオペレーターや技術者の育成には、時間とコストがかかり、施工会社の大きな負担となっています。

現場レベルでは、従来の施工方法に習熟した技術者や技能者の間で、新しい技術を導入した業務フローに戸惑いが見られるなど、現場の意識改革も不可欠です。

データの連携や標準化がなかなか進まないことも、現場への技術浸透が遅れるもう一つの原因に挙げられます。異なるメーカーの機器やソフトウェア間でデータの連携がスムーズにできないと、かえって作業効率が低下しかねません。そのため、3Dデータの標準フォーマットやワークフローを早急に確立する必要があります。

加えて、ICT施工を円滑に進めるには、発注者側の理解も重要です。国が主導し、ICT施工を前提とした発注方式や積算基準を整備していく必要があるでしょう。

ICT施工の導入に向けた取り組みのシリーズ1回目の今回は、ICT施工の概要と目的を解説しました。次回は国の導入推進施策と導入支援を紹介します。

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