2024年4月に時間外労働の上限規制が建設業に適用されてから、約2年が経過しました。「長時間労働・休みが少ない・給与が安い」という建設業のイメージはどのように変わったのでしょうか。データをもとに、働く人の視点で建設業界の変化を見ていきます。
2024年問題の概要と2026年までの推移
2024年問題とは、2024年4月から建設業に時間外労働の上限規制が適用されたことで生じる諸問題を指します。原則として月45時間・年360時間の上限が設けられ、業界全体の働き方改革が本格的にスタートした年です。
2025年は現場レベルで試行錯誤を繰り返した段階でした。手探りで工程調整や人員配置の見直しを進めながら、現場運用面で課題を抱える企業も多く、対応に温度差が見られた時期でもあります。
しかし2026年以降、週休2日制や残業規制はもはやルールではなく「当然の前提」として扱われるようになりました。一例を挙げると、週休2日制の達成状況(実績ベース)が評価・加点対象となり、工事の受注に直接影響します。
2026年度からはBIM/CIMの原則適用も重なり、DXへの対応力が現場のリソース配分のカギを握る見込みです。企業・技術者いずれにとっても、工程最適化や人材配分の見直しがいっそう問われるようになるでしょう。
2024年以降の建設業界で働く人にとっての4つの変化
残業規制の適用から約2年が経過した今、働く人の環境にはどのような変化が生まれているのでしょうか。労働時間・休暇・給与・人の流れという4つの視点から見ていきましょう。
参照:日本建設業連合会「4.建設労働 | 建設業の現状」
1.労働時間面の変化
他産業で働き方改革が始まった2019年以降、建設業界の年間労働時間は緩やかな減少傾向が続いています。日本建設業連合会のデータによると、建設業の2024年の年間労働時間は1,943時間となり、2019年の2,048時間と比べると105時間の削減です。
全産業平均(1,714時間)との差は依然として約230時間ありますが、規制が適用された2024年には前年比で35時間減少しており、上限規制が現場に確実に影響を与えていることがわかります。
2.休暇面の変化
2024年の年間出勤日数は238日となり、2023年から大幅に減少しています。週休2日工事が各地で広がった成果です。
2025年9月から2026年2月にかけては、国土交通省が週休2日工事を実施していない市区町村116団体に対し個別訪問を実施しました(入札契約適正化キャラバン)。その結果、対象となったすべての団体で令和7年度または令和8年度中の週休2日工事実施が見込まれる状況となり、すべての公共工事での週休2日化が現実的な目標として射程に入っています。
施工管理職にとっては、無理な工期調整に悩まされる場面も減るのではないでしょうか。
3.給与面の変化
労働時間が減少する中、収入の減少が気になる方も多いのではないでしょうか。
日本建設業連合会(日建連)のデータによると、2024年の建設業従事者(男性)の年間賃金総支給額は前年よりわずかに減少していますが、全体としては高い水準が維持されています(技能労働者は2024年も増加)。
2024年の小幅な減少については、2023年に前年比30万円もの大幅増加があった反動との見方もあるようです。長期的な推移でみると、建設業従事者(男性)の賃金は2013年以降継続して上昇しています。14年連続の労務単価引き上げにも後押しされ、業界の給与水準は今後も高まっていくでしょう。
4.入職・離職者数の変化
2024年は入職者数が離職者数を大きく上回りました。2000年代前半は離職者数が入職者数を大幅に上回る厳しい状況が続いていましたが、2012年以降は建設需要の拡大を追い風に入職者が増加。一時的に逆転していた時期もあったものの、2024年は再び入職者数が離職者数を上回り、入職率11.7%(対前年1.0%アップ)というポジティブな変化が見られます。
業界全体に待遇改善の動きが拡大したことで、転職先としての建設業に魅力を感じる人が増えたといえそうです。
2026年以降、建設業界で働く人に求められること
国土交通省は建設業が「週休2日が可能な業界」であることを前提としたうえで、今後は猛暑対策や変形労働時間制、ICT活用を組み合わせた多様な働き方の実現を目指しています。それに伴い、建設業界で働く人たちに求められるスキルや資質も変化してきています。
業界全体で見ると、次のような流れが加速していく見込みです。
- 待遇向上(賃金水準の底上げと休日確保の両立)
- 柔軟な働き方の一般化(変形労働時間制や猛暑対策シフトなど)
- 建設ディレクターをはじめとしたバックオフィス人材の台頭
こうした環境変化のなかで、建設業界で働く個人に求められるスキルは以下のとおりりです。
- IT基礎知識とデジタルツールの活用力
- 自動化できる業務・できない業務を見極める判断力
- プロジェクト全体を見渡せるマネジメントスキル
特に、現場経験とデジタルスキルの両方を持つ方は、今後の建設業界で活躍の場が大きく広がっていきます。待遇改善が進む現在は、建設業界でのキャリアを見直す絶好の機会といえそうです。
