近年、土木工事の現場では、外国人技能者とともに働く機会が増えています。多様な人材が現場を支える一方で、安全指示や作業手順、危険予知を正確に伝えるためには、これまで以上に分かりやすいコミュニケーションが求められます。
施工管理者にとって、国籍や日本語力の違いに配慮しながら安全な現場をつくる力は、今後ますます重要になるスキルです。今回は、外国人技能者と安全に働くために、施工管理で意識したいポイントを解説します。
多国籍化する土木現場では、施工管理者の伝える力が重要になる
はじめに、土木工事の現場で外国人材が増えている背景と、施工管理者の仕事にどのような影響があるのかを解説します。
建設業で外国人材が増えている背景
建設業では、就業者の高齢化と若年層の入職者不足が大きな課題となっています。国土交通省の資料でも、建設業就業者は55歳以上の割合が高く、29歳以下の若年層が少ないことが示されています。今後10年で多くのベテラン技能者が現場を離れることが見込まれ、予断を許さない状況です。
こうした担い手不足を背景に、外国人材の受け入れや定着に向けた制度整備も進められています。在留資格の整備が進んだことで、外国人技能者が土木現場を支える場面も増えています。
多国籍化する現場で安全管理に配慮が必要な理由
多国籍化する現場では、安全管理そのものが難しくなるというよりも、「危険をどう伝えるか」「理解できているかをどう確認するか」がより重要になります。
日本人同士であれば伝わっていたはずの合図や慣習も、日本語に不慣れな技能者には正確に伝わらないことも少なくありません。認識のズレがヒヤリハットや事故を招く可能性もあるため、施工管理者には、作業内容や危険箇所を言語化・視覚化して共有する工夫が求められます。
外国人技能者と安全に働くための具体策
ここでは、外国人技能者と安全に働くために欠かせない具体的な工夫を解説します。
新規入場者教育は「理解できたか」まで確認する
新規入場者教育では、返事だけで理解したと判断せず、復唱や実演を通じて理解度を確認することが大切です。
- 母国語の資料や図解を活用する
- 「やさしい日本語※」で説明する
- 作業場所ごとの具体的な危険ポイントを提示する
※「やさしい日本語」のポイント
- はっきり、ゆっくり話す
- 主語・述語を明確にする
- 一文を短くする
- 不要なカタカナ語は避ける(専門用語は意味を補足する)
- 曖昧な表現や二重否定を避ける
説明だけで終わらせず、復唱や実演をしてもらい、本人の理解度を確認しましょう。質問しやすい声かけの仕方に留意することも大切です。
安全看板・作業手順書は多言語化と視覚化を組み合わせる
文字情報だけでは、日本語に不慣れな人には危険箇所が伝わりにくいことがあります。安全看板・作業手順書は多言語化に加え、写真・図・ピクトグラムで直感的に理解できる形にすることが重要です。看板に母国語を併記し、禁止事項を色枠で囲んだり、危険箇所を色分けして表示するのも良いでしょう。
こうした工夫で、日本語が得意でない技能者にも内容が伝わりやすくなります。研修や事前学習には、スマートフォンで繰り返し視聴できる動画マニュアル(厚生労働省「建設業に従事する外国人労働者向け教材」など)も役立ちます。
指示出しは短く・具体的に
指示を伝わりやすくするためには、短く具体的に伝えるのがポイントです。「やさしい日本語」を意識し、以下のように伝えてみてください。
| 悪い例 | 良い例 |
| 「ちゃんとやって」 | 「ヘルメットのあごひもを締めてください」 |
| 「気をつけて」 | 「重機の旋回範囲に入らないでください」 |
| 「あれ持ってきて」 | 「A(場所)にあるカラーコーンを3個持ってきてください」 |
指示を出した後、本人が理解できているか確認しましょう。
合図・危険予知・暗黙知を見える化する
合図やかけ声の意味が曖昧だったり、現場によって違ったりすると外国人材が戸惑ってしまいます。合図・危険予知・暗黙知を共有しやすい形に言語化することが大切です。
- 現場内で使用する合図を統一する
- 身振りの意味を事前に確認・共有する
- 危険箇所を示す地図や写真を共有する
これらを徹底すれば、言葉だけでは伝わりにくい危険情報も共有しやすくなります。また、KY活動では外国人技能者が発言しやすい雰囲気をつくるために、こちらから質問を投げかけるなど工夫することも大切です。完璧な日本語でなくても、気づきを共有できればリスクの見逃しを減らせます。
施工管理者と職場に求められる「伝わる安全管理」
多国籍化する現場で安全を守るために、施工管理者には相手の日本語理解度や文化的背景に配慮したコミュニケーションが求められます。信頼関係を構築し、お互いが働きやすい環境にするために、以下を心がけてみてください。
- いつでも質問しやすい関係性を構築する
- 可能であれば、母国語で相談できる先輩・通訳・支援担当者と連携する
- 職場全体で外国人材をサポートする体制を整備する
安全管理を施工管理者一人に任せきりにするのではなく、職場全体で外国人技能者を受け入れ、より良い関係で同じ現場の仲間として働く意識をもつことが大切です。
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多様な人と現場を動かす力は、施工管理者の重要なスキル
多国籍化する土木現場では、施工管理者に求められる安全管理のあり方も変わりつつあります。日本人同士の慣習や暗黙知だけに頼るのではなく、作業手順や危険情報を誰にでも分かる形で共有することが重要です。
外国人技能者が質問しやすく、危険に気づいたときに声を上げやすい職場は、すべての作業員・技術者にとっても安全で働きやすい職場です。多様な人材と協働しながら現場を動かす力は、これからの施工管理者に欠かせないスキルといえるでしょう。
