土木施工の求人でよく見かける「工事監理」と、施工管理を意味する「工事管理」を混同したり間違えてしまうことがあります。一級建築士の免許登録申請でも、実務経歴書に「工事監理」と「施工管理」を取り違えて記載しているケースが多いそうです。
そこで今回は、名称の紛らわしい「監理」と「管理」について、業務内容や必要資格の違いを解説します。
工事監理と工事管理(施工管理)はどうちがう?
工事監理と工事管理、どちらも工事の要職である点では共通しています。読みが同じで紛らわしいため、建設業界では工事監理を「サラカン(皿のかんり)」、工事管理を「タケカン(竹かんむりのかんり)」と呼び分けることが多いようです。
ここでは、似ているようで異なる工事監理と工事管理の定義と仕事内容、役割の違いを解説します。
定義と立場の違い
「工事監理(サラカン)」の定義は、工事を設計図書と照合し、設計図書のとおりに実施されているかを確認・検査する仕事のことです。工事監理は主に建築士事務所に所属し、施工主の代理人の立場で工事の監督者の役割を担います。
一方の工事管理(施工管理・タケカン)とは、建築物の工事が計画どおりに進行するよう、工程や原価、品質などのマネジメントを行う仕事のことです。主な所属先は発注者と工事請負契約を交わした元請事業者(建設会社・住宅メーカーなど)または、元請事業者と工事請負契約を交わした専門工事業者に勤めるケースもあります。
工事管理(施工管理)は工事現場の責任者の立場で、工事の全工程を管理する役割を担います。
仕事内容の違い
工事監理は、工事の工程ではなくできあがりに対し、施主側の立場で以下のチェックと報告を行います。
- 工事監理方針の説明
- 設計図書の内容チェック
- 設計図書と施工図の検討と施主への報告
- 工事と設計図書との照合・確認・結果報告
- 工事監理報告書の提出
目視や抽出、品質管理記録確認などにより、「工事が設計図どおりに施工されているか」「指定の材料を使用しているか」「品質が想定レベルを満たしているか」をチェックします。問題があれば施行者へ是正指導を行い、検査結果を施主に報告するまでが工事監理の仕事です。
一方の工事管理(施工管理)は、施工会社側で以下の工事管理業務を担います。
- 工程管理:施工順序や工程計画を検討し、大工などの職人を手配する
- 原価管理:コスト削減を図り利益確保を検討する
- 品質管理:設計で定められた品質を確保できるよう検証・保証する
- 安全管理:作業員および周辺住民の安全を確保する
- 予算管理:契約した請負金額で工事を完了できるよう調整する
できあがった建築物ではなく、工事の工程をマネジメントする点が工事監理と異なります。
保有資格の違い
工事監理の仕事には、一級建築士、二級建築士もしくは木造建築士の資格が必要で、実務には施工管理の知見も必要です。そのため工事監理には無資格や未経験からではなく、実務経験を積みながら建築士の資格を取得し、就業することになります。
一方の工事管理(施工管理)は、資格があれば優遇されますが、なくても就業できます。就職してから実務経験を積んで資格を取得すれば、2級で工事責任者(主任技術者)、1級で大規模工事の責任者(監理技術者)になることも可能です。そのため、無資格や未経験から施工管理技士の資格を取得し、ステップアップする人も少なくありません。
監理と管理を分けている理由
一見、同じ会社で設計から建築工事まで一貫して請け負い、チェックするほうが効率よく見えますが、多くの工事で監理と管理を分けているのには理由があります。
同じ会社や利害関係の一致する会社どうしで監理業務を請け負うと、自社や雇用者に不利益なチェックや報告が行われない可能性があるためです。特に工事監理者を下請けや社員に行わせれば、チェック機能が十分に働かず、欠陥の見落としにもつながりかねません。
監理を適切に行うためには、施工サイドではなく設計サイドの会社で監理業務を実施するほうがよいといえます。両者を別の会社で実施するとコストは生じますが、あとから欠陥が発見され追加の手戻りが発生するよりは、結果的にトータルの費用を抑えられる点もメリットです。
工事監理と工事管理(施工管理)の求人を紹介
ここで実際にある工事監理と工事管理の求人をチェックしてみましょう。
【工事監理】
- 仕事内容:自動車道工事の事業監理業務
- 年収:500万円~600万円(経験を考慮)
- 資格・経験など:技術士・1級土木施工管理技士・RCCMのいずれかの資格を有する方
※事業計画、設計図書の理解と判断能力のある方
※Microsoft officeソフトの基本操作、2DCAD基本操作(AutoCAD)
※PPP、発注者支援業務などの経験があれば尚可 - 休暇:完全週休2日制(土曜・日曜)、祝日、夏季休暇(5日)、年末年始休暇(7日)、年次有給休暇その他休暇制度あり
【工事管理(施工管理)】
- 仕事内容:土木施工管理技術者(発注者側)
- 年収:600万円~700万円(経験を考慮)
- 資格・経験など:下記いずれかの資格保有者
- 1級(2級)土木施工管理技士
- 技術士(補)
- 土木学会資格者
- RCCM
- コンクリート技士
- 測量士
※Microsoft officeソフトの基本操作、2DCAD基本操作(AutoCAD)
- 休暇:完全週休2日制(土曜・日曜)、祝日、夏季休暇(5日)、年末年始休暇(7日)、年次有給休暇その他休暇制度あり
上記はほんの一例で、実際にはこのほかにも多彩な発注者による求人が出ています。施工管理では「無資格OK」「未経験OK」の求人もあるため、ステップアップへの足がかりとして実務経験を積むのも1つの手です。
パシコン技術管理では、公共工事・発注者支援などの大規模プロジェクトに携われる案件が多数あります。資格取得やキャリアチェンジの支援制度も整っているため、自分の市場価値を高めたい方はぜひ、パシコン技術管理のお仕事にチャレンジしてみてください。