2024年4月以降、建設業界でも罰則付きの時間外労働の上限規制が適用されます。一方で長時間労働の常態化など、実際の業務時短には課題も多いようです。
今回は、従来の建設業界における働き方のデータをもとに、建設業界における働き方改革がどのように進み、今後の働き方にどのような変化が見込まれるのかについて解説します。
時間外労働の上限規制とは?
建設業界では適用が猶予されていた「時間外労働の上限規制」が、2024年4月以降適用されます。
「時間外労働の上限規制」とは、2018年に公布された働き方改革関連法に基づき、労働時間に上限が設けられたものです。建設業については5年の猶予が設けられていましたが、2023年度いっぱいで猶予期間が終了します。
建設業に猶予が設けられた理由は、人手不足などにより「長時間労働が常態化」していたためです。
2023年までは「特別条件付き36協定」を締結することで、1年に6ヵ月まで上限なく時間外労働が可能でした。
しかし2024年4月からは36協定の上限規制「月45時間以内、年360時間以内」に違反した場合に、罰則を科せられるようになります。
建設業の年間実労働時間の実態
ここで、2021年の統計から建設業の労働時間の実態を見てみましょう。
・全産業:1,709時間
・建設業:2,032時間
全産業と比べると、年間実労働時間の差は323時間、1ヵ月あたり27時間で、やはり建設業の労働時間が長いことがわかります。
続いて、建設業の週休2日制への取り組みについて、作業所の「4週8閉所」の実施状況を見てみましょう。
2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
土木工事 | 44.1% | 49.4% | 57.2% |
建設工事 | 31.9% | 32.6% | 34.3% |
週休2日の実施割合データによると、2020年からの3年間で土木工事では明らかな改善が見られ、建設工事でも緩やかな上昇が見られます。今後も工事現場での週休2日制は、労働時間の削減と合わせて推進されていくと考えられます。
建設業の労働時間が減らない原因
建設業の長時間労働が常態化しているのは、次の原因によるといわれます。
・工期までに完工させる必要性
・人手不足の深刻化
・繁忙期の業務量の増加
・イレギュラー対応の発生
・競争激化による安価・短工期案件の発生
建設業の働き方の特徴は、年間で繁忙期と閑散期があること、変形労働時間制に近い勤務体系を取ることです。また受注型ビジネスゆえに、クライアントのイレギュラーな要望を断れない事情もあります。
建設業界は他の業界に比べ、自社以外の要因により業務効率化と時短が難しい傾向にあることは事実です。
現場における人手不足感も深刻で、国・建設業界をあげて人材獲得のための施策を行っているところです。
進む建設業界の働き方改革
近年、建設業事業者のなかにも時短につながる働き方改革に成功している事例が増えてきました。
注目すべきは、中小企業の中にもタブレットなどのIT機器の活用や、シフト制勤務の導入、工程表を週休2日で組むといった工夫により、業務効率化と時短に成功している事業者が増加していることです。
実際に作業員のタブレット使用や、日常の連絡でのLINEワークスといったチャットツールの活用、Web会議の採用などで、現場を含めた働き方改革を実現している企業も多くなりました。
建設業界では今後、徐々に残業の制限や週休2日制が浸透していくと考えられます。働き方改革と同時に推進されているICT化やBIM化により、建設業全体で業務効率化による時短が期待できるためです。
こうした創意工夫や技術革新が広がりを見せているため、建設業界でのライフワークバランスが他業界と並ぶ日も、そう遠くないでしょう。